膝関節

膝関節とは

 膝関節は大腿骨と脛骨、膝蓋骨によって構成されている関節です。
 膝関節は、体重を支えたり、立ったり、歩いたりなどの日常生活動作を行う上で大切な関節です。しかし、膝関節に障害が生じると、日常生活動作を行う上で痛みが生じ、動きも悪くなるため、日常生活がとても不便になります。その状態が続くと、膝関節周囲の筋力が低下してしまい、更に痛みが強くなることもあります。状態によっては膝関節のみならず、腰痛や足関節痛、股関節痛など他の関節にも痛みや変形が生じることもあります。

主な膝関節の病気

変形性膝関節症

 変形性膝関節症は、筋力低下、加齢、肥満などをきっかけに膝関節の機能が低下することで、関節軟骨の変性・磨耗が生じたり半月板の変性や断裂が起き、骨の変形や破壊、滑膜の炎症が起きることで、痛みや動きの制限が生じ日常生活動作の障害をきたす膝関節疾患です。
 男女比は1:4で女性に多くみられ、高齢者になるほど罹患率は高くなります。初期では立ち上がり、歩きはじめなど動作の開始時のみに痛みが生じるものの休めば痛みがとれますが、中期では正座や階段昇降が困難となり、末期になると、安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、歩行が困難になるのが特徴です。

大腿骨顆部骨壊死

 大腿骨顆部骨壊死は、大腿骨顆部を栄養する血管の血流が悪くなり、大腿骨顆部の骨組織が壊死し、関節の変形・破壊が生じる病気です。ステロイド剤を多量に使用した場合に発症することまありますが、明らかな原因がなく発症する場合もあり、その詳細は未だ不明です。
 一般的に60歳以上の中高年の女性に多くみられ、主に体重のかかる大腿骨の内側の顆部(内顆)という場所に骨壊死が生じることが多いです。診断にはMRI検査が極めて重要となります。

関節リウマチ

 自己の免疫が関節を侵し、関節痛や関節の変形が生じる代表的な膠原病の1つで、炎症性自己免疫疾患です。
 女性に多い疾患(男女比:1対4)で、30~50歳をピークに若者から高齢者全般に及びます。 身体の多くの関節に炎症が起こり、関節が腫れて痛みが生じます。最初は手や足の関節に痛みや腫れを伴う関節炎が起き、やがて肘や肩、首などの関節に広がっていきます。膝関節に及ぶ場合には、膝関節を曲げたり伸ばせなくなったり、立ったり坐ったりする動作や階段の「昇る、降りる」の動作などがスムーズにできなく なったりします。また、膝関節を動かせる範囲が狭くなるため、歩き方がぎこちなくなります。

前十字靭帯損傷

 前十字靭帯(ACL:Anterior Cruciate Ligament)は、大腿骨と脛骨を結ぶ強靭な靭帯で脛骨が前方へずれることを防ぐ等、関節を安定に保つ組織です。
 前十字靭帯損傷は主にスポーツをしている人によく起こるケガです。特にサッカーやバスケットボール、スキー等の急激な方向転換を伴うスポーツや、ラグビーやアメリカンフットボール、格闘技などコンタクトの多いスポーツにおいて、自分の意思とは違った方向に関節が強制的に持っていかれたり、地面に着地した際に、体重で大きく曲がってしまったときに起こることが多いです。
 徒手検査や症状の経過からも予測可能ですが、診断にはMRI検査が有用です。

半月板損傷

 膝関節の内側(内側半月板)または外側(外側半月板)にある半月板がスポーツ動作や、加齢に伴う変性などにより損傷・断裂した状態です。
 損傷すると、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかり感を感じたりします。ひどい場合には、膝に水がたまったり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」という状態になり、歩けなくなるほど痛くなることもあります。
 徒手検査や症状の経過からも予測可能ですが、診断にはMRI検査が有用です。

治療方法

保存療法

 薬や湿布等の薬物療法とリハビリを組み合わせて治療していく方法です。状態によっては、保存療法によって症状が改善されることで日常生活動作がしやすくなる患者様もいます。
 手術をする・しないに関わらず、関節の可動域を改善させたり筋力を付けることは非常に大切なことです。今後手術を控えている患者様も、今すぐには手術が難しい患者様も、保存療法で痛みをコントロールしながら可動域を改善させたり筋力を付けるという治療方法の選択肢もあります。

手術療法
人工膝関節全置換術(TKA:Total Knee Arthroplasty)

 人工膝関節全置換術は、変形性膝関節症やリウマチなどによる痛みや変形を生じている膝関節に対し、すり減った軟骨や傷んだ骨を人工関節に入れ替える手術です。術後は痛みなく歩くことができ、退院時には段差や階段の上り降りもスムースに行えるようになります。
 手術では膝関節周囲の組織を傷つけるため、手術直後は腫れて、膝の曲げ伸ばしがしづらく、力も入りにくくなります。そのため術後にリハビリが必要になります。当院では傷つけた組織が治る過程に合わせ、腫れが出ないように管理をしながら、膝の曲げ伸ばしがスムースになるように膝周りを柔らかくし、トレーニングをすることで力が入りやすくなります。退院後ご自宅での生活や仕事が問題なく行えるよう、患者様ひとりひとりに合わせたリハビリを提供しております。

人工膝関節単顆置換術 (UKA:Unicompartmental Knee Arthroplasty )

 人工膝関単顆置換術は、関節のすり減りが「内側だけ」または「外側だけ」の場合に、すり減った側だけを人工関節に入れ替える手術です。この手術の特徴は人工膝関節全置換術(TKA)と比較すると、患者様の体にかかる負担が少なく済み、回復が早いと言われています。同じ膝関節の手術を受けるなら、負担が少なく回復の早い人工膝関節単顆置換術 (UKA )を望まれる方も多いと思いますが、病態や患者様の状態によって適応とならない場合もありますので、担当医との相談が必要となります。
 手術後は、人工膝関節全置換術(TKA)と同様で、手術では膝関節周囲の組織を傷つけるため、手術直後は腫れて、膝の曲げ伸ばしがしづらく、力も入りにくくなります。そのため術後にリハビリが必要になります。当院では傷つけた組織が治る過程に合わせ、腫れが出ないように管理をしながら、膝の曲げ伸ばしがスムースになるように膝周りを柔らかくし、トレーニングをすることで力が入りやすくなります。退院後ご自宅での生活や仕事が問題なく行えるよう、患者様ひとりひとりに合わせたリハビリを提供しております。

前十字靭帯再建術

 前十字靭帯再建術は、膝関節の内側の筋肉(半腱様筋、薄筋)の腱を使用して靭帯を再建する手術です。
 再建靭帯は手術直後から3ヵ月程度は特に強度が弱く、徐々に強度が増していくため再断裂やゆるみの危険性があります。そのため、日常生活動作を気を付ける必要があるとともに、段階的なリハビリを行っていく必要性があります。当院では傷つけた組織が治る過程に合わせ、また主治医とも相談しながら状態を確認し、日常生活およびスポーツ復帰ができるように患者様ひとりひとりに合わせたリハビリを提供しております。

半月板縫合術・切除術

 半月板損傷に対して行われる手術には、損傷した半月板を縫い合わせる縫合術と損傷した半月板を切り取る切除術の2種類があります。
 半月板は膝のクッションの役割を果たすため、なるべく温存できる方がいいと言われています。そのため縫合術を行い温存できる状態の場合は可能な範囲で縫合術を行います。ただし、損傷の程度によっては縫合できないこともありますので、その際は損傷部位のみを切除する部分切除を行います。
 縫合術でも縫合した場所や範囲によって術後の安静度が変わってきますので、手術後は主治医と相談しながら状態を確認し、日常生活およびスポーツ復帰ができるように患者様ひとりひとりに合わせたリハビリを提供しております。