股関節が痛い方へ
主な股関節の病気
- 変形性股関節症
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変形性股関節症は寛骨臼や大腿骨頭を覆っている関節軟骨の変性・磨耗によって、骨の変形や破壊、滑膜の炎症が起き、痛みや動きの制限が生じることにより日常生活動作の障害をきたす股関節疾患です。明らかな原因が不明な一次性股関節症と、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全などが原因で生じる二次性股関節症に大別することができます。日本では先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全などに続発する二次性のものが多く、女性に多いのが特徴です。
- 特発性大腿骨頭壊死症
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大腿骨頭に血液を送る動脈と静脈があります。血管の走行は非常に複雑で、血行障害を起こしやすい構造になっています。大腿骨頭壊死症は、この大腿骨頭を栄養する血管の血流が悪くなり、大腿骨頭の骨組織が壊死し、関節の変形・破壊が生じる病気です。多くは原因不明ですが、ステロイド剤を多量に使用した場合や、 アルコール摂取量の多い人などに発症することが多いです。診断にはMRI検査が極めて重要となります。また、大腿骨骨頭壊死症は国の特定疾患に指定されています。
- 関節リウマチ
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自己の免疫が関節を侵し、関節痛や関節の変形が生じる代表的な膠原病の1つで、炎症性自己免疫疾患です。
女性に多い疾患(男女比:1対4)で、30~50歳をピークに若者から高齢者全般に及びます。 身体の多くの関節に炎症が起こり、関節が腫れて痛みが生じます。最初は手や足の関節に痛みや腫れを伴う関節炎が起き、やがて肘や肩、首などの関節に広がっていきます。股関節に及ぶ場合には、股関節を曲げたり伸ばせなくなったり、立ったり坐ったりする動作や階段の「昇る、降りる」の動作などがスムーズにできなく なったりします。また、股関節を動かせる範囲が狭くなるため、歩き方がぎこちなくなります。
治療方法
- 保存療法
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薬や湿布等の薬物療法とリハビリを組み合わせて治療していく方法です。状態によっては、保存療法によって症状が改善されることで日常生活動作がしやすくなる患者様もいます。
手術をする・しないに関わらず、関節の可動域を改善させたり筋力を付けることは非常に大切なことです。今後手術を控えている患者様も、今すぐには手術が難しい患者様も、保存療法で痛みをコントロールしながら可動域を改善させたり筋力を付けるという治療方法の選択肢もあります。 - 手術療法
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- 人工股関節全置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)
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人工股関節全置換術は、変形性股関節症や大腿骨頭壊死症などの股関節に痛みが出る疾患に対して行われるスタンダードな手術方法です。この手術は、非常に優れた除痛効果があり、関節の変形によってもたらされた股関節の動きの悪さを改善することが可能です。手術後に日常生活への早期復帰をするためには、手術によって傷ついた組織の修復を考慮し、適切なタイミングで適切なリハビリを行うことが不可欠です。当院の入院期間は3~4週間となりますが、これは一般的な入院期間と比較して長い期間です。それは、患者さんを第一に考え、退院後も安心して生活をできるようにするためです。リハビリでは、早い時期から積極的に理学療法士が介入し、硬くなった筋肉のストレッチや筋力強化練習や有酸素運動を行い、靴下の着脱や階段昇降をはじめとした日常生活動作を行います。
- 偏心性寛骨臼回転骨切り術(ERAO:Eccentric Rotational Acetabular Osteotomy )
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股関節の変形が初期の段階であれば、人工関節ではなく寛骨臼回転骨切り術を行うことで、自身の骨で関節を温存することが可能となります。寛骨臼回転骨切り術は、寛骨臼形成不全の方が適応とされ、骨盤をくり抜いて骨頭の被りを深くして安定させる手術です。この手術の目的は、症状の緩和とともに股関節症の進行を遅らせることです。当院では20〜40代の方が多く受けられています。術後早期は十分なリスク管理を行いながら、股関節の動きを改善して、筋力トレーニングをする事で、歩行や日常生活に必要な股関節の機能を目指していきます。荷重開始後は状態に合わせて徐々に運動負荷をあげていきます。
- 大腿骨骨切り術
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大腿骨骨切り術は、大腿骨頭壊死症の方が適応とされ、壊死部が荷重面にこない位置に回転させる関節温存手術です。壊死部の場所や範囲によって、彎曲内反骨切り術(CVO)、前方回転骨切り術(ARO)、後方回転骨切り術(PRO)等の手術方法が選択されます。術後早期は十分なリスク管理を行いながら、股関節の動きを改善して、筋力トレーニングをする事で、歩行や日常生活に必要な股関節の機能を目指していきます。荷重開始後は状態に合わせて徐々に運動負荷をあげていきます。